データから見るリーグワン12チーム比較 セットピース編(最終回)

どうもスシ丸です。データで見るリーグワン比較最終回、セットピース編です。(緑が平均以上、赤が平均以下)アタック編ディフェンス&キック編もあげてるのでぜひ見てください。それでは早速見ていきましょう

まずはレギュラーシーズン無敗のワイルドナイツですが、まさに「オールグリーン」です。ラインナウト成功率は国際試合で80%、リーグワンは85%程度が成功率の平均といえますがワイルドナイツはその平均を大きく上回る89%、リーグ全体で見ても2位と高い成功率を誇ります。またラック成功率、スクラム勝率でもリーグ平均以上で、セットピースにおいても安定していたことがデータからもわかります。

2位の東芝ブレイブルーパス接点無双を掲げる彼らですが以外にもセットピースの成功率は高くありません。ラインナウト成功率はリーグ平均をわずかに下回る84%、スクラムの勝率も同様です。どちらかといえばラック数が少ないことからも、接点で立って繋ぎ、イージーミスなく得点まで繋げる力を持っているからこそこの数値でも2位につけれたのかと思います。主観ですが、東芝のFWは3列にフリゼル、リーチと4・5番と合わせて4名のジャンパー兼リフターがおり、ラインナウトの敵の成功率はかなり抑えられている印象です。

3位のサントリーサンゴリアスはワイルドナイツ同様セットピースで無類の強さを発揮しているチームです。スタッツでもラインナウト総数も多い中、失敗数23とリーグワン最小かつ成功率は驚異の90.7%でリーグワン最高の数字です。ここにはLOハリーホッキングスがラインナウト成功数100と2位のマックスダグラスと31の差をつけてリーグワンぶっちぎりの1位と彼が大きな存在となっています。アタック編で語ったサントリーがキックを多用する戦術を組むということも、この成功率の高さであれば納得できます。またラック成功率、スクラム成功率ともにリーグ平均以上で2年連続プレーオフ出場のスター軍団らしい数字といえます。

4位のキャノンイーグルス、ラインナウト失敗数とスクラム勝率こそリーグ平均以下ですが、それほど平均と乖離していないので特別セットピースに優劣は無いと思われます。実際No8アマナキとFLコーバスファンダイクの2人はジャンパーもでき東芝同様4人ジャンパーでラインナウトも安定しています。

5位の神戸は逆に明確に課題が浮き彫りとなっており、204㎝長身の元オールブラックス、ブロディレタリックを擁するにもかかわらずラインナウト成功率が80%とリーグ平均から大きく離れています。原因には個人的にはリーグワン全体のレベルが上がったことや先日の日本代表トレーニングスコッドにも名前を連ねたHO松岡のスローが安定しなかったこともあるかと思っています。どちらにせよ来季神戸がプレーオフに進むためには乗り越えなければならない壁です。

続いて6位のクボタスピアーズ、ラインナウト成功率が86%で12チーム4位、またスクラム成功率が86%とリーグワン最高の数字で、南ア代表マルコムマークスがいないシーズンにも関わらず圧倒的なセットピースの安定を見せています。特にスクラムの負けがシーズンを通して4というのは良い意味で異常です。またラックの総数が近鉄ライナーズについで少なく、大柄な外国人選手のオフロードや体幹の強い両WTBのランで積極的にオフロードを狙う姿勢が表れています。LOのJDシカリングやヘルウヴェの退団もありますがマークスが復帰する来期はセットピースがより強固となり王者にふさわしい成績となるかもしれませんね。

7位のトヨタですがラック勝ち、負け、スクラムの勝ち、負け全てがリーグ平均以下で、これ自体に意味はありませんが、敢えて言うならばレヴスのようにスクラムで勝負ができるチームでは無かったことがわかります。主力の退団も多いトヨタですがキャプテンの姫野も来夏まで離脱と、どこに進んでいくのでしょうか。注目です。

続いて8位の静岡ブルーレヴス、ここは皆さん何が強いかご存知ですよね。スクラムです。実際スクラムの勝数は130と2位の東芝に18の差をつけてぶっちぎりの1位です。しかし同時に勝率は80%とリーグ平均以上もそれほど高くはなく、私見ですがスクラムを強みとしていてもどうしても選手個々の疲労等で負けてしまうこともあるので、強みだからスクラムで勝負→負けてしまうようなことも発生しやすいと考えています。南アのように全員最強に強くてその為に戦術すらくんじゃうチームだと別になってきますけどね…課題としては総数が少ないのでそれほど悪くはありませんがラインナウト成功率で、ここはスキルフルHOのベテラン日野には奮起が必要です。

さて次は9位ディフェンス&キック編で優秀なスタッツを見せた相模原ダイナボアーズですが、ラインナウト成功率はリーグワン6位、スクラム成功率もリーグ平均以上とセットピースにおいても安定していたことがわかります。ただしラックの成功率とラック失敗数が多いことは課題で、これはサポートの遅れや接点で負けてしまった場合に起こりやすいので、来期改善が望まれる部分となっています。

10位のブラックラムズはラック勝率97%でリーグワン1位、スクラム勝率でも85%でリーグワン2位素晴らしいスタッツです。しかし課題はラインナウトで失敗数がリーグワンワーストの53、成功率もリーグワーストの77%です。入れ替え戦ではこのあたりも敵に狙われやすいので何かしらの対策は必須でしょう

さてラムズと対照的なのが11位のホンダヒート。ラインナウトの失敗数がリーグ最少の23で成功率はリーグワン3位の88%とこちらも明確に強みを持っています。一方でスクラムは負けが21、勝率は64%とかなり厳しい数字ですが、最終戦で本復帰してきたパブロマテーラと上向いてきたチームの調子、ヒートファンの熱い応援があればきっと入れ替え戦も大丈夫でしょう

最後は12位の近鉄ライナーズ。こちらはオールレッドと厳しいスタッツです。強いてあげるならばラック総数が少ないので攻めるにしても早めにキックを使っていたような印象があります。ここはリーグワンの強度の高さによることもありますが、よりボールをポゼッションして勝てるチーム作りが求められるところかと思います。しかし決してDiv.2にいるレベルでは無いチームですので、こちらも上向いてきたチームの勢いそのままに入れ替え戦を勝ち抜いてほしいと思います。

以上、セットピース編でした!ここまで3回にわたってきたデータでみるリーグワン、いかがだったでしょうか?皆さんの新しい気づきが一つでもあれば幸いです。良かったら👉のTwitter(X)のフォローもお願いしますm(__)m

それではリーグワン2023-2024シーズンも残りあと少し、全力で楽しみましょう!ありがとうございました!

データから見るリーグワン12チーム比較(ディフェンス&キック編)

どうも、スシ丸です。前回に引き続き今回は各チームのディフェンス&キック編です。まだ読んでない方はこちらから。今回もあくまでリーグワンの平均値との比較ですが、各チームの強みと課題が見えてきました。(左から右に順位順、緑が平均以上、赤が平均以下)

それでは改めて、アタックで圧倒的だった1位のワイルドナイツですが、DFでもそのスタッツは優秀の一言です。アタックの時間が長いのでタックル成功数こそ少ないですが、12チームタックル失敗数最小・12チームタックル成功率1位、被ペナルティ同率11位とシーズンを無敗で飾ったその実力の裏打ちともとれるスタッツです。被ターンオーバーに関してもボールキャリーがリーグワン平均より300回程度多い(2117回)中でこの数値は優秀と言わざるを得ません。唯一の弱点といえるのはトライ後のコンバージョン成功率がリーグ平均以下(成功率8位)であることです。これは松田選手自身の不調もありますが、交代時の山沢拓也、京平、ダミアンデアレンデ等キッカーを複数で回していたことも影響しているかと思います。またインプレーキックが全チーム最多で、その成績を鑑みてもエリアマネジメントではリーグワンNo1であることは間違いないでしょう。

次に2位東芝ですが、タックルに関しては総数が2,331と12チームダントツの1位でこれは東芝のDFが崩れない、粘り強いDFの証左かと思います。一方被ペナルティ(ペナルティを犯した数)はリーグワースト4位で不用意な反則が多いことは気がかりです。実際、リーチも最終節の試合後に主審と(チョークタックル時の)タックルリリースのタイミングを合わせなければならないと語っています。またインプレーキックが12チーム7位ですが、これはSOモウンガのパス能力が高く、他チームよりもパスやランで打開が可能なためキック数が多くない理由となっています。プレーオフでは規律を保ち強みであるFWでいかにブレイクダウンを支配できるかがポイントとなるでしょう。

3位のサントリーですが、被ペナルティはリーグワン2位でかなり規律面は整えられている印象です。また若干22歳のSO高本君のコンバージョン成功率もリーグワン平均以上と最終3位につける実力は確かです。しかしタックル成功率が82%と1位ワイルドナイツと4%の開きがあり、何よりも被ターンオーバー(ターンオーバーされた回数)がリーグワン12チームワーストなことは課題です。その要因はフォローの問題やコンビネーション様々考えられますがアタック編で語ったサントリーのトライ数が伸び悩んだ一因かと思います。ここが改善できるかどうかが東芝との決戦を左右するかと思います。

続いて4位のキャノンイーグルスはターンオーバー(12チーム9位)ペナルティ(同9位)ともに少なくチームの規律、コンビネーション共に安定していることがわかります。またワイルドナイツと同様インプレーキックが453と全体2位で司令塔田村を中心にエリアを優先した戦いを好むことが伺えます。課題はタックル成功率(全体同率10位)とワースト3となってしまったコンバージョン成功率で、2年連続プレーオフの相手となるワイルドナイツとの最終節でもタックル成功率78%(141/180)と次週までにどう改善してくるのか、または逆に奇策に全振りしてアタックでワイルドナイツを攻略していくのか、沢木監督の手腕に注目です。

5位の神戸はアタックに全振りのイメージでしたがタックル成功率はワイルドナイツと同率で12チーム中1位と素晴らしい成績でした。またコンバージョン成功率も79.55%と12チーム1位で今季得点王&ベストキッカーのSOブリンガットランドの力がスタッツに如実に表れています。課題はターンオーバーとペナルティで、特にペナルティはキャプテンのレタリックが記者会見でも何度も改善の必要があると発言していました。アーディ以外のコアメンバーは残ることが決まっているので、ここが改善すれば来年は優勝のダークホースとなる可能性もあります。

6位のクボタは突出した数値はありませんが、リーグワン平均と比べペナルティは少なく(全体5位)規律面では上位でした。一方のコンバージョン成功率はワースト4位とSOバーナードフォーリーの離脱がここにも響いていますね。

7位のトヨタはタックル成功率・被ターンオーバー・被ペナルティの3つ全てが赤色のことからも難しいシーズンだったことが伺えます。インプレーキックが12チーム3位であることからもボーデンバレット中心にきっちりとエリアを確保する戦いが好まれていた印象です。

さて8位の静岡ブルーレヴス、アタック編ではボール保持の傾向があることはお話ししましたが、インプレーキックが286リーグワン最小で、またタックル成功率が81%とリーグワンワーストであることからも意図的にDFの弱みを出さないように戦っていた可能性もあります。絶対的なDFの柱であるクワッガスミスも来期復帰ですが、ここがレヴスが来期飛躍できるかのポイントになりそうです。

次に9位ダイナボアーズですが、下位チームで唯一タックル成功率が84%とリーグワン平均を上回りましたクロスボーダーラグビー期間も徹底して練習させたグレンディレーニーHCの鬼の指導の成果と言えます。課題はターンオーバーとペナルティで来期上位に食い込むためにはここの改革も必須でしょう。https://youtu.be/TVk9czsOf9E?si=BDpnQDXkxyny97svちなみにこちらの動画でディレーニーHCの哲学と思いが語られていますが、私はこれを見てよりダイナボアーズのラグビーが好きになりました。彼がいなければDiv.1のダイナボアーズは無いわけですから、彼を引っ張ってこれたことはダイナボアーズフロントの大きな財産だと思います。

さて話がそれましたが続いて10位ブラックラムズ。タックル総数がリーグワン最小で、これだけでは評価しづらいですが、失点数は下位4チーム最小の503点で比較的DFは良いスタッツです。しかし下位4チーム共通ですが被ペナルティが多いことが課題ですね。入れ替え戦ではDiv.2相手にどこまで規律良くゲームを進められるかがカギとなりそうです。

11位のホンダヒートタックル総数リーグワン1位で、今期リーグワンで最もDFをしたチームと言えます。アタックの時間が少ないためターンオーバーも少なく、課題はペナルティといかにマイボールの時間を増やすかです。その為には①ペナルティやイージーミスを減らす②相手エリアでプレーすることが大事です。①はわかりやすいですが、②の理由は相手エリアでのプレーは結果自分達の得点か、相手のキックでの脱出で終わりやすいからです。入れ替え戦は一発勝負なので、エリアマネジメントがかなり重要になってきます。

最後に12位ライナーズですが、タックル成功率と被ペナルティがリーグワーストで課題は明らかです。ここの改善のいかんが大一番を優勢に進められるかのカギとなります。最終節に向けて改善傾向はあるので、向井監督の手腕に期待しましょう。

さて、ここからですが、一つ面白いと思った画像を共有します。

こちらは欧州クラブチームのチャンピオンシップ(14試合)におけるドロップゴールの試投数とミス数の一覧を国別に分けたものです。アイルランド所属のチームは0に対して南ア勢は10とかなりの差があります。ここで我らがリーグワンはどうかというと成功数7、試投数はおそらく2倍程度にはなるので、リーグ全体では南アと同程度蹴られていることがわかります。なぜ南アと近い数なんでしょう。南アに近いスタイルのチームが多いから?南ア出身のHCやアタックコーチが多いから?単純にそれだけでは説明できそうにありませんが、もう一つ気になったのはアイルランドのチームがドロップゴール0の理由です。何か戦術的な進化で蹴らなくなっているのであれば面白いですし、今年の夏のテストマッチも注視して何かわかればまた書こうと思います。

以上、データから見る12チームDF編でした。明日12チームのセットピース編(スクラム、ラインナウト)をやります。実はここが1番チームごとの色と意外なスタッツとなっていますのでまたお待ちください!それでは、ありがとうございました!